AVENを紹介するブログ—その他Asexualityについて

エース当事者が運営するブログです。AVEN(エイヴン)—The Asexual Visibility and Education NetworkのHPに掲載されているFAQやリソースを和訳して転載しています。和訳は、エイヴンのプロジェクトチームに承認されています。(2022) / その他エイセクシュアル(アセクシュアル)に関する情報を投稿します。 ※記事の無断転載はご遠慮ください。

エイセクシュアルとDSM-5

エイセクシュアルは性機能障害ではない。〜DSMに明記されるようになった経緯〜

注意:性行為に関する言及あり。

 

エイセクシュアルは、性機能障害の状態ではない。

上述のことは、精神医学界の権威書—DSMも認めている。DSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)とは、米国精神医学会の精神障害の診断と統計マニュアルのこと。世界中の医師や精神医療関係者が、精神疾患を判断する際に使用している点で極めて重要な本だ。現在の日本の精神医療の現場でも診断を下す際に使用されている。バイナリ以外の人々は考慮されていない点は注意。

DSMに記述がなされたことは、エイセクシュアルの人々にとって非常に重要な出来事である。ここではAVENメンバーのTumblrの投稿を参考にして、エイセクシュアルが明記されるようになった経緯をまとめた。

 


・性欲がない。
・セックスをしたくない。

このような主張は、DSMによって低活発性性欲求障害(HSDD)と呼ばれる性機能障害のひとつと考えられてきた。性交の苦痛や対人障害とあいまった性的欲求の低下として診断が下されていた。(1994年からDSM第4版が発行された2000年ごろまでのこと。)

そのような診断基準は長らくエイセクシュアルの人々を苦しめてきた。

これに端を発したのが、当時、エイセクシュアル・コミュニティの中心的存在だったAVEN(エイヴン)。5名で構成されたAVEN・プロジェクトチームは、エイセクシュアリティについてのレポートをDSM-IV-TR審査委員会へ提出した。レポートの詳細は不明だが、主にエイセクシュアルに関する学術論文、心理学者へのインタビュー、臨床医がどのようにエイセクシュアルを判断すべきかなどの報告とともに、当事者の声明文が添えられたという。紙幅にしておおよそ78ページ。これを受理し、吟味したDSM審査委員会は、2013年にエイセクシュアリティについて言及を書き加えた。

DSM-5には、エイセクシュアリティに関する記述が追記されている。
しかし、その内容は少々トリッキーなものだった。

 

エイセクシュアリティを自認し、無性愛によって性的欲求の低さを説明できている場合、性機能障害(Sexual Dysfunction)の診断は下さない。

DSM-5 625.89 (F52.0) 


またこうも書かれてあった。

生涯にわたって性欲がないことが、エイセクシュアリティを自認することでよりよく説明できるのであれば障害の診断は下されないだろう。

DSM-5 302.72 (F52.22)

 

さて、上述の診断基準がどの程度の意味をなすのか。つまるところそれは、まったく臨床医の認識に委ねられている。通常、患者と医療関係者とのあいだには、クライアントに対して継続的な治療を約束することで儲けを得る、というサイクルが存在している。
精神科医にとって、上記のエイセクシャリティの自認はどれくらい考慮できるものなのか。エースコミュニティではしばしば、エイセクシュアルの理解に協力的でない臨床医のほうが多いとすら言われている。 
医療関係者達によって慎重に扱われるべきなのは、エイセクシュアルの人々だけではない。エイセクシュアル・スペクトラムに属するすべての人が対象とされるべきだ。グレイセクシュアルやデミセクシュアルの人たちに性機能障害のラベルを貼らず、当事者のアイデンティティを尊重し保証するためには医療関係者とクライアントの対話が重要になってくる。

 

DSM-IVにおけるエイセクシュアルの追記を受けて、AVENのプロジェクトメンバーは、「精神科医の診断がエイセクシュアルの人々に大きな影響を与えることには変わりない」と語っている。加えて、DSMの記述より深刻な問題は、「セックスへの欲求の低い人々との臨床的対話の少なさ」だと指摘している。

 

※参考資料としてAsexual Archive(Aセクシュアリティについての資料が保管されているサイト)のページを抜粋。最後にそのページに記されていた筆者のメッセージを引用する。 

Asexuality in the DSM-5 Asexuality is OFFICIALLY not a disorder, according to the APAwww.asexualityarchive.com

 

私(当事者)は、"この本にエイセクシュアルが載っているからエイセクシュアルであることは問題ない "と言っているのではないことをはっきりさせておきたいと思います。
私たちエイセクシュアルのことがこの本に載っているのは、エイセクシュアルがまったく問題ではないからなのです。

 

 

 

執筆参考資料;https://rotten-zucchinis.tumblr.com/post/125907513485/how-the-dsm-sort-of-came-to