AVENを紹介するブログ—その他Asexualityについて

エース当事者が運営するブログです。AVEN(エイヴン)—The Asexual Visibility and Education NetworkのHPに掲載されているFAQやリソースを和訳して転載しています。和訳は、エイヴンのプロジェクトチームに承認されています。(2022) / その他エイセクシュアル(アセクシュアル)に関する情報を投稿します。 ※記事の無断転載はご遠慮ください。

(3)概要 / Overview

概要/Overview

"Asexual"—エイセクシュアルとは、性的な魅力を経験しない人のことです。彼らは、他者に性的に惹かれることがなく、性的な方法で相手にアピールしたいと思うこともありません。これは、性行為を控える独身主義とは異なります。エイセクシュアリティは、ほかの性的指向と同じように、人間の本質的なありかたのひとつであるといえます。エイセクシュアルだからといって、暮らしに不都合が生じたり、逆に豊かになったりすることは本来ありません。エイセクシュアルのコミュニティをみてみると、人間関係、魅力について、性的な興奮など、セクシュアリティに関する体験や経験は、当事者によってかなり違いがあります。

近年、エイセクシュアリティは、心理学、性科学、その他の学問分野での研究対象として注目されつつあります。エイセクシュアルが人口に占める割合の推定値に関しては、さまざまな見解がありますが、最も広く引用されている数字は、人口のおよそ1%であるというものです。

 

 

アトラクション/Attraction

エイセクシュアルの人は、ロマンティックな魅力や美的な魅力に惹かれることがあります。また、相手の体に触れて気持ちを共有したいと思うこともあります。ただし、魅力を感じて惹かれたとしても、性的な行動をとることはしません。エイセクシュアルの人は、性行為をともなわない、別の手段によってパートナー関係を満たすことを望みます。例えば、ロマンティックな魅力とは、ほかの人と恋愛関係になりたいと思うことを指します。美的魅力とは、その人の外見に惹かれるということです。また、感覚的な魅力とは、ハグや手をつなぐなどの物理的な触れ合い(ただし性交はしない)をしたいという欲求です。これらの魅力を経験したエイセクシュアルの人は、しばしば自らをレズビアン、ゲイ、バイ、またはストレート(異性愛)であると自認することができます。また、性的な魅力とロマンティックな魅力を分けて考える人もいます。例えば、エイセクシュアルで異性との関係を望む人は、「ヘテロロマンティック・エイセクシュアル」と名乗ることがあります。ほとんどのセクシュアルの人(性的な魅力に惹かれる人)は、そのように指向を分けないことが一般的です。言い換えれば、性的に惹かれていることと、ロマンティックに惹かれていることを一緒にしていることがあります。しかし、エイセクシュアルの人は、何がきっかけで、相手に何を求めているか明確にするため、性的なことに惹かれる魅力とロマンティックな魅力を分けて考える必要があります。

 

 

性的な興奮について/Arousal

エイセクシュアルの人の中には、性的興奮を定期的に感じる人もいます。しかしその興奮は性的パートナーを見つけたいという願望とは関係がありません。(「性的興奮」は、エイセクシュアルの会話の中で「リビドー」と言いかえられることがあります。)性的興奮は、月経周期のホルモン変動によるものや、 一日の中で特定の時間帯に勃起することなどが含まれます。他にも、自慰行為をするエイセクシュアルの人もいます。注意していただきたいことは、いずれの場合も、パートナー(他者)との性行為にまったく関心がなく行為への欲求を抱いていないということです。また、性的興奮を全く感じないノン・リビドー主義と呼ばれるエイセクシュアルの人たちもいます。エイセクシュアルであるかどうかは、他人に対する性的な惹かれを感じるのかどうか、性行為をしたいという欲求があるかどうかに関わるものです。そのため生理的な現象であるリビドーを感じる人も、ノン・リビドーの人も、どちらもエイセクシュアルだとされています。

上述のように、性行為に対する本質的な欲求がないため、エイセクシュアルの人は性的興奮の欠如を改善するべき問題だとは考えていません。もしも、性的興奮を感じていたとしても、性行為ができないことで欲求不満に思ったり、幸福度に支障が生じることはありません。

留意すべき点は、エイセクシュアリティは、HSDD(Hypoactive Sexual Desire Disorder)などの医学的疾患ではないということです。HSDDはDSM-Vに記載されていますが、エイセクシュアリティは含まれず、当事者がエイセクシュアルを自認している場合は疾患から除外せよと明記がなされています。HSDDの場合、個人的な苦痛をともなうほど性欲が満たされずに苦しんでいることが背景にあります。性的興奮を感じないことを不安に思ったり、性行為に興味を失ってつらいと感じている場合は、医療専門家に相談し、診断してもらうことを推奨いたします。

 

 

人間関係/Relationships

エイセクシュアリティは、人間の感情的な欲求を制限するものではありません。セクシュアルの人たちと同じように、欲求をどのように満たすかは人それぞれです。例えば、恋愛関係を望む人もいます。ひとりでいるのが幸せな人もいるでしょうし、親しい友人関係を重視する人もいるでしょう。

性的であろうとなかろうと、人間関係は、人と人とのつながりによって成り立っています。コミュニケーション、親密さ、楽しさ、ユーモア、わくわく感、信頼は、エイセクシュアルの人にとっても大変重要です。特に、恋愛関係を望むエイセクシュアルの人にはお手本が少ないかもしれません。ですが、ロマンティックな感情の共有を求めていることは他のどの人とも同じで変わりはありません。したがって、エイセクシュアルの人が恋愛をしない(できない)と主張することは誤りです。

エイセクシュアルの人口はごく少数であるため、恋愛関係を望むエイセクシュアル同士の出会いの場はとても限られています。他の性的指向のマイノリティに比べると、アイデンティティとコミュニティの歴史も浅いことが現状です。また、エイセクシュアリティは目に見えない指向であるため、セクシュアルな人々の中で気づかれないままになっていることがよくあります。そのような場合、エイセクシュアルの人々が、性的スキンシップや性行為への妥協を余儀なくされているという課題があります。当事者の中には、望まない行為がトラウマとなってしまったり、心身の健康に深刻な影響を被って苦しんでいる人もいます。

 

 

アイデンティティ/Identity

ほとんどのエイセクシュアルは、生涯にわたってエイセクシュアルであり続けますが、誰も彼もが、用語やコミュニティについて意識しているわけではありません。ストレートからゲイに突然なることがほぼないように、エイセクシュアルの人が突然セクシュアルになることはほぼありません。また、思春期や性的アイデンティティを模索する時期、あるいは対人関係が大きく変化する時期など、自分自身のセクシュアリティに疑問を持ちながら、ある期間だけ自分のことをエイセクシュアルだと考える人もいます。

エイセクシュアル・アイデンティフィケーション・スケール(Asexual Identification Scale)の研究は学術的に進められていますが、エイセクシュアルであるかどうかを判定するテストはありません。エイセクシュアルは、ほかのアイデンティティと同じように、自分自身を理解するために使う「言葉」であり、自分自身を他者に伝えるためのものだと思ってください。もし、エイセクシュアルという言葉が自分自身を表現するのに役立つと感じたら、あなたはエイセクシュアルであると自認することができます。その後、やはり自分はエイセクシュアルではない、と思うことがあれば、それでもよいとされています。AVENは、当事者やパートナー、家族の経験や考え方を共有することで、より深く自分自身を発見する手助けをしたいと考えています。AVENは、当事者だけでなく、当事者を支えようとするあらゆる人々に対してサポートを提供し、知恵を共有するために活動しています。   

 

 

 

 

Link to original source :

Overview | The Asexual Visibility and Education Network | asexuality.org