AVENを紹介するブログ—その他Asexualityについて

エース当事者が運営するブログです。AVEN(エイヴン)—The Asexual Visibility and Education NetworkのHPに掲載されているFAQやリソースを和訳して転載しています。和訳は、エイヴンのプロジェクトチームに承認されています。(2022) / その他エイセクシュアル(アセクシュアル)に関する情報を投稿します。 ※記事の無断転載はご遠慮ください。

AVEN(エイヴン)の創設者、デイヴィッド・ジェイ

デイヴィッド・ジェイ—エイセクシュアル活動家が語る『つながり』

 

David Jay —American asexual activist


デイヴィッド・ジェイは、アメリカのエイセクシュアル活動家である。性的魅力を感じない人々の世界最大のオンライン・コミュニティを代表する、AVEN(Asexual Visibility and Education Network)の創設者である。エイセクシュアリティは選択ではなく、性的指向であると主張している。

 

ジェイは『エイセクシュアル』を発明した人物ではない。彼は、18歳の時に仲間の無性愛者たちとその組織を創設した(2001)。そして、組織の代表としてスピーチの場に立つようになった。
まだ、エイセクシュアルへの理解がほとんどなかった時代のこと。ジェイが組織の顔として選ばれた理由のひとつは、彼自身が性差別や人種差別によって排除されてきた無性愛者にあてはまらなかったからだという。
彼は、白人のシスジェンダー(出生児の性別と性自認が一致していること)で合法的な家族のもとに生まれた。これがトランスジェンダーだったり、年配者や女性だったり、有色人種の人々ならば話は別だ。すなわち、当時彼は、アメリカ社会でも権威を持って話すことが許され、信頼できるスピーカーとして紹介されたのである。

そのデイヴィッド・ジェイが、2012年にideacity(カナダに拠点置く組織が主催するカンファレンス)で行なったスピーチがある。YouTubeで視聴できる。スピーチの中でジェイは、Aセクシャルの人々にもセクシャルな人と同じようにつながりの欲求があることに着目しつつ、『つながり』と人間関係について考察している。

 

一部抜粋して紹介。注意:性行為に関する言及あり。

 

David Jay – Asexuality | ideacity www.ideacity.ca

 

では、とても普遍的な人間の経験についてお話したいと思います。『つながり』を見出そうとする葛藤についてです。

あなたが、誰かと素晴らしい深い会話をしたときのことを思い出してください。それが自分の体の中でどんな感じだったか考えてみてください。他の人と関わっているとき、それがどんな感じだったか考えてみてください。 
私が『つながり』と言ったのは、そういう意味です。そして、私はコミュニティにおけるつながりを求める闘いについて話そうと思います。初めて聞くかもしれませんが、私のようなエイセクシュアルを自認する人たちのコミュニティのお話です。 

”エイセクシュアル”とは、性的魅力を感じない人のことです。 

考えてみれば、セックスが大好きな人もいる。セックスが好きな人もいるけど、それほどでもない人もいる。そう考えると、全く関心がない人だっているということは理にかなっています。全く性的なことに興味がない人もいるはずです。私たちのコミュニティについて理解すべき重要なことは、私たちも他の人たちと同じようにつながりを求めているということです。ただ、そのつながりを性的なやりかたで表現したいという願望がないだけなのです。 

 

 私たちのコミュニティ活動が始まったころ、Googleに【アセクシュアル】という言葉を入力する人が何百人、何千人といたのを覚えています。そして、多くの人々がこのコミュニティを見つけたのです。多くの人々が「自分と同じような人たちを見つけた」という、圧倒的な達成感を味わいました。皆、それまで世界で孤独を感じ、自分が壊れているように感じていたのです。でも、自分と同じような人たちが集まるコミュニティを見つけたことで 、「悩んでいたのは自分だけではなかった」と思えたのです。

 

当時、私の性的な友人たちは、エイセクシュアルのコミュニティ活動を見て少し困惑したようです。私がコミュニティについて話すと、彼らの反応はこんな感じでした。
「つまり、あなたたちはセックスに興味がないだけなのに、何を偉そうに言っているの? 家にいるだけでいいんじゃないかな。なんで外でそんなコミュニティをつくる必要があるの? セックスに興味がないって、便利だと思うよ。どんな葛藤があるっていうの?」
このような質問に答えるために、あなたの高校時代を思い出してほしいと思います。友達や恋人と呼ばれる人たちとたくさんつながっていて、その人たちと多くの時間を過ごしていたかもしれません。その人たちは、あなたが深く惹かれる人たちであったかもしれません。もっと近い関係になりたいと思ったかもしれません。そのような時、私はセクシュアリティを伴う関係を持ちたいと思わなかったのです。もしあなたがセクシャルな人であれば、これには違和感を感じ、混乱するかもしれません。
セクシュアリティを伴う関係は、ある意味で祝福され優先的に語られてきました。非セクシャルな関係はそうではありません。

 

そうして、私たちエイセクシュアルの人々は、他の人とのつながりを得ることができないのではないかと不安になります。これは、私たち全員が絶望していることです。
きょう、私がこの話をしたのは、エイセクシュアルの人々が集まりコミュニティが団結した理由を説明するためです。私たちの『つながり 』を求める闘いは、既存のセクシュアリティの文化に絡め取られているという事実と関係があるのです。これは、エイセクシュアルの人たちだけに言えることではありません。社会に飲み込まれているマイノリティは沢山あります。この点で、聴衆の中には、今の私の話に軍配を上げることができる人々がいるはずです。

 

ところで、私はセックスは素晴らしいと思います。それを楽しむ人々にとって、セクシュアリティは素晴らしいものだとも理解しています。でも、今はまだうまく表現できない『つながり』という概念は残されているのです。『つながり』というのは、私の中にあるのではなく、他の人の中にあるのでもなく、私たちの間に存在するものです。私は、ある人に対してひとつの感情を抱くことができます。そしてその人との関係についてはっきりとした愛情を抱くことができます。 

 

エイセクシュアルについてもっと考えてみてください。私たちのつながりを求める闘いが、セクシュアリティ文化に抑圧されていることを忘れないでください。そして、エイセクシュアルをセクシュアルな文化から切り離すには、双方がどのように作用しているのかを理解する必要があるということです。
私たちは、性的なものであろうと非性的なものであろうと、それらが同じであることを認識する必要があります。それらが成長する構造を探る必要があります。そうすれば、新しい種類の『つながり』のための新しい脚本を書くことができます。それは可能です。そうすれば、私たちが共有する『つながり』のための闘いは、ほんの少しだけ楽になるかもしれないと信じています。そして、そうなった世界がどのように見えるのかを想像してみてください。 

ideacity/David Jay, 2012.

 



ジェイは現在、北カルフォルニアで「共同親("co-parent")」として一人の娘を育てている。娘の生物学的両親は、気候学者の父親と非営利団体で働く母親である。三人親の養子縁組はカリフォルニア州によって法的に認められている。この家族の形態は新しく稀なものではないが、クィアコミュニティの多様性を後押しするアイディアとして近年注目されている。